空間へのドローイング展
Dec 28, 2024( Art )
2024年11月9日〜23日、大阪のギャラリーhitotoにて展覧会「空間へのドローイング」を開催させていただきました。
2023年からアーティストコレクティブとして活動を始めた「城下浩伺&みふく」の初個展です。
これまで公開制作やワークショップなどを実験的に行なってきた「空間へのドローイング」というプロジェクトを、初めて展示という形で発表しました。
こんな展示でした
展示形式としては「VRインスタレーション」というのが一番近いかと思います。
城下さんがVRゴーグルを着けて描いたドローイングを私が展開させ、現実空間とVR空間が地続きとなるような体験を作りました。
鑑賞者がギャラリーに入ると、展示室は半透明のカーテンで区切られています。
第一室にはドローイングが展示されていて、まずはそれらを鑑賞していただき、その後カーテンの向こう側にある第二室に移動していただきます。
第二室には一人掛けのソファが置かれており、そちらに座ってVRゴーグルを着けてもらい、先ほど第一室で見たドローイングの中に入っていく体験をしていただきます。
「触れそう」な感覚を味わい、思わず手を伸ばす方も多かったです。
VR体験を終えて第一室に戻っていただくと、先ほど見たドローイングがまったく違う見え方になる……という体験になっています。
作品の詳しいステートメントなど、ご興味のある方はこちらをご覧ください。
なぜ展示をするのか
2022年から本格的にXRを学び作品を作り始めてから、Web制作の仕事と並行して個人制作や「城下浩伺&みふく」としての活動も進めてきましたが、やはり「個展」をちゃんとやらなければいけない、という気持ちがずっとありました。
VR機器を使って空間に描くドローイング群、という前例のないものにどうやって作品としての形を与え、発表すれば良いのか。
ファインアートの作家として活動してきた城下さんのこれまでの作品を知る方々の中には、この2年ほど「城下さんは何やら妙なゴーグルを被って一体何を始めたんだ…?」みたいに思われていた方もいたようです。
それは私達も薄々というかひしひしと感じていて、「どうすればこれが新しい美術表現としてやっているという事を分かってもらえるんだろう」と色々な実験を重ねてきました。
これらの実験を経てようやくVRインスタレーションの形の展示となったのですが、結論から言って「これまで伝えるのにすごく苦労してきたのが嘘のように、展示を見てもらったら一発で伝わった!リアル展示の威力はやっぱりすごい!」という感じでした。
(もちろん一発で伝わることが最良というわけではなく、「これはどうなんだろう〜〜!?もうちょっと考えたい!」という方もいて、それはそれですごく嬉しいことです。)
展示に来てくださった方がSNSに投稿してくださった感想から一部をご紹介します。
「バーチャルと美術の取り合わせってどうゆうの?ってなってたのだけど、なんと身体的で人間的なのかととってもワクワクしました。」
「見ている私の実体はあるのにVRの中では透けていて、線が体を通り過ぎていきます。なんだかこそばゆかったです。」
「今後の(自分の)写真に影響しそうです。」(フォトグラファーの方)
「メディアアートとしての価値を感じつつ、描くという基本的かつ原始的な行為がかえってクローズアップされる実践のようにも思えた。」
「感動しました。マルセル・デュシャンの『アンフラマンス』と言う言葉を初めて体感した思いも。」
(最後のご感想は私がこっそりと裏コンセプトにしていたキーワードを言い当ててくださって嬉しかったです…)
大変だったこと
これまでも城下さんの展示の展示デザインはしてきたのですが、今回は展示デザインもしつつ、自分も作品を作らなければいけないし、またVRインスタレーションの形式が初めてだったので、あらゆる事に時間と手間がかかりました。
今回、まず実際のギャラリー空間をモデリングしてVRの中に再現し、その中に入って構想しながら展示空間を作り、それを現実空間でも再現するという、リアルとバーチャルを行き来するやり方で展示を作りました。
VRの中で作った空間を現実で再現しようとすると、ありとあらゆる物理的制限にぶつかります。予算も無限ではありませんが、自分が見たい景色を妥協するのも嫌だという気持ちも強くて、だいぶ悩みました。
ごみを極力出したくなくて、展示に使うものはできるだけレンタルしたかったのですが、購入よりもずっと高かったりちょうど良いものがなかったりして、結局すべてレンタルではなく購入になってしまったり。
展示会期がスタートすると、予想していなかったテクニカルなトラブルもありました。電圧の不安定によるVR再生の不具合や、VR機器の仕様による現実空間とVR空間の位置合わせのズレなど毎日何かしら起こるので、会期中は(1日を除いて)全日程在廊し、鑑賞のアテンドも自分達で行いました。
VR鑑賞のアテンドやテクニカルトラブルに関する対応など、2週間の展示会期中の経験から様々な知見を得ることができました。
今後の展開です
次はこの展示を別の地に巡回させたいと考えています。
といっても、場所に合わせてまた空間をあらたに作るので、巡回とは言えないかもしれません。
「空間へのドローイング」はこのVRインスタレーションの展示の他にも様々な展開が今も同時進行しているプロジェクトですので、この先も何かとお目にかける機会があると思います。
お近くの地でご鑑賞いただける機会がありましたら、ぜひお越しください。
Webはもうやってないの?
情報発信やブログ更新がXRに関する事ばかりになっているので、Web制作はもうしてないんでしょうか とお問い合わせいただいたり尋ねられる事がちょくちょくあるのですが、「みふくデザイン」の本業は今もWebです!
次回あたり、WebとXRの比較や、デザイン業とアーティスト業が相互にどう関わり合っているか等、ブログを書きながら考えてみようと思います。