広報ってどうすればいい?

Jan 6, 2020( 個人事業主

明けましておめでとうございます。本年もどうぞよろしくお願い致します。

もう昨年の事になるんですが、馬喰町のギャラリーKKAGで行われたトークイベント「写真家のための広報力アップ戦略会議」を拝聴してきました。奈良の鹿の写真を撮るために有給を全て使っているという写真家の石井陽子さんと、石井さんの1冊目の写真集「しかしか」を出版したリトルモアの広報 福桜麻依子さんのトークです。
石井さんが普段は外資系メーカーの広報をされている事から、「広報」に特化したトークを企画されたそう。

とても勉強になる内容で、写真家だけでなく全てのクリエイターさんや個人事業主さんにも必要な情報だと思ったので、リトルモアの福桜さんに許可を得て内容をまとめさせてもらいました。最後にトークの記事もリンクしておきますので、ご興味を持たれた方はそちらもご覧ください。

 

まず、そもそも「広報(パブリシティ)」とは何か。

お金を払って掲載してもらう「広告」とは違い、基本的にお金をかけずに宣伝することです。
出版社には「広報費」というのが基本的にないので、新聞・雑誌・テレビ・ラジオ・インターネットなどいろいろな媒体で「読者や視聴者にとって意味がある情報」として紹介してもらうことを目標とします。

(すごく大きい出版社なら、お金を払って取り上げてもらう「ペイドパブ」もあります)

パブリティは特に映画業界で重要な役割を担っています。リトルモアがパブリティに強いのは、出版だけでなく映画配給もしているから。福桜さんはリトルモアで13年間、300冊以上の本の広報を担当されています。

パブリシティって普段あまり耳慣れない言葉だと思いますので、Wikipediaから引用しておきます。

広告との本質的な相違は、代金の払う払わないという点よりも、媒体から発せられるメッセージが、企業や組織(広告の場合は広告主)が主体性をもって、その責任の上で発信されるもの(広告)か、媒体(報道機関)の主体性に基づき、その責任において発信されるものか、という点にある。

つまり、発信者がどれだけ掲載してほしくても、メディア媒体が「この情報は読者 / 視聴者にとって有益だ」と判断してもらえなければ載せてもらえないのがパブリシティ。言い方を変えれば、読者 / 視聴者の役に立つ情報であれば、お金を払わずに宣伝してもらえるのがパブリシティ、とも言えます。
広告宣伝費の予算などない個人事業主さんや作家さん達も、パブリシティならお金をかけずにできるというわけです。

では何から始めれば良いのか。まず必要なのが「プレスリリース」です。本が出ます、展示をします、といった情報をまとめた「お知らせ」です。

掲載する内容は、

①タイトル(写真集なら本のタイトル)

②誰(写真集なら誰が撮ってるのか)

③何(写真集なら何を撮ってるのか)

④付随する情報(写真集なら展覧会があるのか)

⑤何か目を引くようなトピックス

これを、とにかく短くまとめてA4サイズpdf1枚におさめます。そして、少しでも引っかかる可能性のある媒体に送信します。

かといって、プレスリリースメールはまず読まれないと考えた方が良く、電話なら出てくれることも。一番確実性が高いのは直接会いにいくこと。
本の場合だと献本というのがありますが、新聞社に本を送っても、3~4日でゴミとして捨てられてしまうので、福桜さんは何度も足を運んで直接手渡しするそうです。(これは広報のプロである福桜さんにしかできない技だと思いますが……)

ちなみに「アート・カルチャー」のコーナーは、メディア媒体では悲しいかな「一番どうでもいい(軽い)情報」なので、雑誌のカルチャー面は新人が任される事が多いらしく、担当者の入れ替わりが早いのも難しいところだそう。


また、媒体によってアプローチを変えることも必要で、たとえば石井さんの写真集「しかしか」なら

・作者のキャラクターのおもしろさ(普段は企業の広報として働いているのに、有給は全部奈良に行って鹿の写真を撮るのに費やしている)
・犬や猫じゃなく、鹿の写真集は珍しい
・古都・奈良の、町としての魅力
・地方の害獣問題

など多面的なアプローチができるので、媒体に合わせてどの面を見せるのかを変えれば色々な提案ができる。

(ただし作家さんが自分で広報をする場合、相手に合わせて見せる面をコロコロ変える事は「作家として一貫性がない」という印象を与える危険もあり、「広報係」という第三者だから使える手かもしれません)

 

そして、基本的に読まれずに削除される運命のプレスリリース、削除する手を一瞬引き止められるかどうかは「何か目を引くようなトピックスが載っているか」にかかっています。
「他所でも取り上げられてる」「注目されている」という事を、できるだけ具体的に示す。特に新聞社はすごくそれを気にするそうで、何かしら具体的な数字を聞きたがるということ。

そんなものないよ!という声が聞こえてきそうですが、これがないとまず目に留めてもらえないのも事実。だから自分でその布石を置いていくことが大事だと福桜さんは仰っていました。

福桜さんの場合は最近ラジオに力を入れていて、J-Wave、東京FMなどのラジオ番組に作家さんに出演してもらうそうです。そしてそれを「J-Waveにも出演してるらしいですよ、注目されてますよ」と利用する。自分で蒔いた種なんだけど、人ごとのように話す(笑)とのこと。
死ぬほど種を蒔いて芽が出るのは4つぐらいという話が印象的でした。死ぬほどかぁ…

 

次回、このトークで得た知識を元にして実際にプレスリリースを作ってみます。
広報するものは、私が参加しているクリエイターチーム「act」の展覧会「_act_RELATE つたえる を つくる展」。


けっこう要素の多いこの展覧会、A41枚にまとまるのか……。

 

>トークの様子はこちら(TOKYO HEADLINE)

>石井陽子写真集 『しかしか』

>リトルモア

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